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【偽書】熱闘スコアノート(夏娘跳ねる 2015)78

砂原靖巴に統率されたチア部員達は座る事無くスタンドの階段に縦に一列に並んだまま、戦況を見守る。

それは腕組みして仁王立ちする応援団もまた同じだった。

スタンドの思いはひとつ。最小得点差を守りきりアウトを3つ奪う事だ。

「サインは大河内が出せ。リズムを考えてな」

高野幸一は単に二年生投手三妻を育てるだけでなく、自身がマウンドに居ない分、捕手のふっくら君のリードまで心配しなくてはならない。

キャプテン監督は大変だわ。

かつて我が校野球部の暴君と呼ばれ、戦国武将織田信長張りだった孤高のエース浜田剛とは違い、高野幸一は自己の理想を追求しつつも、チームに目配せを欠かさないタイプの絶対的エースだった。

それを支えていたのは先日見掛けた今は女子大生の水戸屋恵美。

そして高野幸一はプロ野球界からも注目を集める立場にもなっていた。

取材に来ていた元プロ野球選手で高校野球をリポートするテレビ番組のリポーターさんがべた褒めしていた…とお兄ちゃんから聞いた事がある。

当時の私は野球には興味が無かったのので、何故お兄ちゃんがプロ野球から注目されていないのかと憤慨していた。

そんな何も知らない私をお兄ちゃんは全く仕方がないなという顔をして笑っていたっけ。

幼い頃からテレビなどでお仕事をしていた私には、お兄ちゃんが野球をやっている事は知っていても、野球をやっている人の大半はプロ野球選手か大学生になるものだと思っていたので、たかだか千人足らずしかプロ野球12球団にプロ登録されていないと知るまではその程度の野球の知識や認識しか持っていなかった。

9回2死までたどり着いた段階に来て、北高は代打を送って来る。

二年生のその打者はしぶとく粘り四球で出塁。

更に次の打者も二年生の代打が送られてくる。

二年生投手には二年生で対抗だとばかりに。

あまりきれいとは言えない二遊間を抜けるヒットでランナーを貯めると、三度二年生代打が打席に立つ。

「一息いれさせよう」

監督の指示でタイムが取られ、伝令が走る。

再び捕手のふっくら君と内野手がマウンドに集まるが、今回は高野幸一は外野の守備位置のままだ。

伝令の指示を聞いた二年生投手三妻は右翼にいる高野幸一の方をちらっと振り返る。

高野幸一は眼光鋭く三妻を見ていた(らしい)。

伝令がベンチに戻り、内野手らの輪が解け、最後にふっくら君が三妻に何かを囁いて守備に戻る。

おおかた、気楽に行こうとか言っているのかもね。

偽書】熱闘スコアノート(夏娘跳ねる 2015)77

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